野菜・果物に関するFAQ
Q and A
25. ミカンをたくさん食べると手が黄色くなることがありますが、なぜでしょうか?
ミカンの橙色はβ-クリプトキサンチンというカロテノイド色素によるもので、近年の疫学研究からがんや糖尿病、リュウマチとの関連で注目されているミカンに多い機能性成分です(「果物の機能性に関する研究動向−β-CRPの不思議」も参照)。このカロテノイドはβ-カロテンやリコペンとは異なり、水酸基(OH)を有しているために体内に入ると脂肪酸と結合して脂肪酸エステルになることがわかっています 1) 。カロテノイドは体内に吸収されると、肝臓などの様々な組織に蓄積されることが知られていますが、β-クリプトキサンチンの脂肪酸エステルは皮下の脂肪組織にも蓄積されることが近年の研究から明らかになりました。また、β-クリプトキサンチンは他のカロテノイドと比較しても摂取した食物から吸収されやすいという特徴もあります 2) , 3) 。これは欧米人のβ-クリプトキサンチン摂取量はβ-カロテン等の他のカロテノイドよりも遙かに少ないのに、血中濃度はそれほど変わらないという興味深い結果から推察されます。
手のひらには皮下脂肪が多いため、目に付きやすいので手が黄色くなると気づきますが、実は手のひらだけでなく様々な組織にβ-クリプトキサンチンは蓄えられます。貯まったβ-クリプトキサンチンはミカンを食べなくなればまた元に戻りますし、病気と勘違いされる方が良くおられますが何の心配も要りません。また同じ量のミカンを食べていても手のひらが黄色くなる度合いは人によってそれぞれです。黄色くなりやすい人とそうでもない人など、これはミカン以外の様々な要因が関わっているからと考えられます 4) 。
参考文献
(1) | Wingerath T et al. 1995. beta-Cryptoxanthin selectively increases in human chylomicrons upon ingestion of tangerine concentrate rich in beta-cryptoxanthin esters. Arch Biochem Biophys 324(2): 385-390. |
(2) | Wahlqvist ML et al. 1994. Changes in serum carotenoids in subjects with colorectal adenomas after 24 mo of beta-carotene supplementation. Australian polyp prevention project investigators. Am J Clin Nutr 60(6): 936-943. |
(3) | Albanes D et al. 1997. Effects of supplemental beta-carotene, cigarette smoking, and alcohol consumption on serum carotenoids in the Alpha-Tocopherol, Beta-Carotene Cancer Prevention Study. Am J Clin Nutr 66(2): 366-372. |
(4) | Sugiura M et al. 2004. Multiple linear regression analysis of the seasonal changes in the serum concentration of beta-cryptoxanthin. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 50(3): 196-202. |
(文責 杉浦 実)