やさい大好き食育体験等の推進
食育体験等の実施
「野菜博士になろう」食育出前授業
(1)概要
子供の野菜摂取不足を解消するためには、調理担当者である保護者の野菜摂取量を改善することも大切であるが、やはり、この時期から子供が主体的に野菜を摂取することができるようになることが、将来の望ましい食生活の確立においても不可欠である。
そこで青果物健康推進協会では、「野菜博士になろう」というテーマを掲げ、全国の小学校への食育出前授業を実施した。授業には、各2名のベジフルティーチャーを派遣し、野菜の重要性や食べることの利益について、子供たちが自ら考えて発表し、クラス内での意見をまとめ、一人ひとりが実践への意欲を高める活動を行った。そして、望ましい野菜料理の摂取目安量を理解し、自ら実践するだけでなく、家族や友人など、周囲の人にその魅力や摂取の大切さについて伝えることができる子供たちを育む活動を実施した。授業終了後にワークシートを提出した児童全員に「準・野菜博士」の認定証を授与し、5つの基準全て満たした児童を「野菜博士」とした。
また本年度は、「野菜博士になろう」食育出前授業の専用ブログを開設し、授業の様子や子どもたちの反応についてベジフルティーチャーに報告してもらった。この取組みは、食育活動について広く教育関係者や一般の方にご理解いただくために活用できたほか、ベジフルティーチャーのスキル向上・精度管理のために有益であった(http://vf7.blog36.fc2.com/)。
ここでは、出前授業の概要と、授業後に実施した振り返りカードの結果から児童の反応を考察したものを報告する。
(2)取組内容
(I)授業のねらい
出前授業で用いたツール。
5ヶ条には、それぞれ達成するための
ポイントを解説している。
野菜の重要性や食べることの利益についての意見を出し合い、「野菜博士」になるために必要な5つの条件を理解して、実践するための意欲を高める。
(II)野菜博士になるための5ヶ条
1)毎朝、野菜料理を食べる。
2)野菜を好き嫌いなく食べる。
3)苦手な野菜を使って簡単な料理をする。
4)毎日、野菜料理を5皿分以上食べる。
5)野菜の必要性を、家族・友人に伝える。
※ 以上の5ヶ条を授業後1週間程度に渡り行い、専用のワークシートに記入したものを提出した
児童には「野菜博士」認定証を授与した。
(III)授業での評価ポイント
1)「野菜博士」になるための5つ条件を理解でき、実践のための意欲が持てたか。
2)1皿分の野菜料理を理解し、望ましい量は1日5皿分であることを理解できたか。
3)苦手な野菜でも、今後食べる自信が持てたか。
(3)授業での評価ポイント
(4)授業終了後の児童の反応
「授業は楽しかったか」については、全体の8割以上が「楽しかった」「まあ楽しかった」と回答していた(図1)。「野菜博士」になるための5つの条件についての理解度も、全体の8割強の児童が「すごくできた」「まあできた」と回答していた(図2)。
図1 授業は楽しかったか
図2 「野菜博士」になるための
5つの条件を理解できたか
一方で、「野菜博士になるための5つのことを、これからやってみようと思うか」という問いに対しては、全体の37%が「すごくやってみたい」と回答していたのに対して、「あまりやりたくない」「全然やりたくない」という回答も全体の7%でみられた(図3)。学年別にみると、4年生の87.8%が「すごくやってみたい」「まあやってみたい」と答えたのに対し、5年生、6年生ではそれぞれ76.4%、69.9%と、学年が上がるにつれて、課題への意欲の低下が示された。
図3 「野菜博士」になるための5つのことを
これからやってみようと思うか
出前授業では、苦手な野菜を克服するための動機付けとして、子どもたち自身が食べることのメリット・デメリットを考える活動を実施した。授業終了後の振り返りカードのなかで、「苦手な野菜でも、これからは食べる自信はあるか」という問いに対し、もともと苦手な野菜がない児童は8%、苦手な野菜はあるが食べる自信がない或いはあまりないと回答した児童は26%と、過半数以上の児童が「とても自信がある」「まあ自信がある」と回答していた(図4)。
図4 苦手な野菜でも、これからは食べる自信があるか
出前授業では、児童が健康のために、野菜料理を1日にどのくらい食べるとよいか、「食事バランスガイド」の「つ」を用いて、摂取目安量についての講義も行った。授業終了後、全体の7割の児童が「5〜6つ」を選択をしていたが、全体の3割の児童は4つ以下或いは7つ以上と回答していた(図5)。さらに、出前授業前日の野菜摂取量について尋ねたところ、最も多かったのは「3〜4つ」(46.5%)で、次いで「5〜6つ」が23%だった(図5)。授業後に、望ましい量についての理解が深まったことで、また課題を行うことで、実際に摂取量に変化があるかどうか、モデル校での前後調査の結果から今後考察したい。
「食事バランスガイド」については、全体の72%が授業終了後に「聞いたことがある」「内容を知っている」と回答した。また、7%の児童ですでに「食事や買い物のときに参考にしている」との回答があった。また、今後「食事バランスガイド」を参考にしたいと思いうかという問いに対しては、9割以上の児童が「とても参考にしたい」「時々参考にしたい」と回答していた。
自由回答では、「野菜は今まで思っていたより大事だと感じた。」「嫌いな野菜でも頑張って食べたらいいことがあるということを感じた」や、「昨日はあまり野菜を食べていないのでこれからは野菜博士めざしてたくさんの野菜料理をこれまで以上に食べていきたいです。」という前向きな感想のほか、「野菜は大切やけど、やっぱり嫌い。」「私は無理かなと思いました」という意見も少数ではあるが報告された。
今回は振り返りカードの単純集計結果をもとに、授業後の児童の反応を報告した。家庭での取組み後の認定証の配布は各学校の先生にお願いしていたので詳細については不明だが、一部の学校からは、児童が実際に苦手な野菜料理を作って食べた様子や、保護者のコメントなどが報告された。その結果、授業終了後に家庭での実践を促すための動機付けや知識の向上を狙った本年度の取組みは、児童だけでなく、保護者や兄弟など、児童を取り巻く周囲の人々に対する摂取啓発につながったと考える。
詳しくはこちらへ→ 青果物健康推進協会