野菜・果物の健康維持機能に関する研究動向
3. 主な果物の生理機能
m. パイナップル
パイナップルに含まれているたんぱく質を分解する酵素ブロメラインは、肉を柔らかくすることで知られています。また、酸味成分のクエン酸は胃液の分泌を良くし、胃腸の働きを助けるので、消化不良などにも効果があると考えられます。なお、ブロメラインは熱に弱いので、60℃以上に加熱するとその効果が失われてしまいますので、特徴を生かした料理の仕方を考えましょう。
ブロメラインはたんぱく分解活性の他に、抗浮腫、抗炎症、抗血栓、血栓溶解作用などの他、血液中の接着分子や血管内皮細胞の機能を変化させたり、免疫系細胞とサイトカイン生成の調節・活性化に関係したりするなど、種々の生理活性を有しています。茎由来の酵素と構造上の違いはありますが、この酵素は果肉にも含まれているので、同様な活性を持つことが考えられます。報文数も多数あるので総説を示します 1)。
パイナップルに含まれているマンガン(0.76mg/100g)は、カルシウム吸収を促進し、骨が成長する時期では発育不全の、成人では骨粗しょう症の予防にもなります。骨はカルシウムやリンが主な成分ですが、マンガンこれらの成分が骨として石灰化するときに、必要不可欠な役割を果たしています。また、骨や関節の結合組織を合成するときに働く酵素の補酵素としても働きます。さらに、パイナップルには果物の中では銅(0.11mg/100g)も豊富に含まれています。
動物試験のレベルでは、がん細胞(ザルコーマL-1)をブロメリンとともに培養した後、マウスに接種したがん細胞の増殖を調べたところ、腫瘍の形成や転移がコントロールに較べ抑制されています。またがん細胞接種後ブロメリンを与えたところ腫瘍の形成が抑制されたとする報告もあります 2)。 パイナップル果実ではありませんが、葉のエタノール抽出物は、糖尿病ラットの血糖値、トリグリセリド、総コレステロール、LDL-コレステロール、糖化アルブミンレベルを有意に下げる一方、HDL-コレステロールレベルを有意に上昇させ、体重減少、血中・脳・肝臓・腎臓での脂質酸化を抑えると報告しています。糖尿病治療薬の可能性が考えられます 3)。
試験管レベルでの研究として、ほ乳類の体内から検出され、パイナップルやバナナにも含まれるテトラヒドロ-β-カルボリン類の、抗酸化活性やフリーラジカル消去活性を報告しています 4)。 また、果物の抗酸化活性を調べた研究では、パイナップルは果実の中でも比較的強い抗酸化活性を有していることが調べられています 5), 6)。