日本人の死因の第1位は、悪性新生物(がん)です。
日本人のがんによる死亡割合は30%を超えており、主要な先進国と比べ、がんによる死亡割合は高い数値となっています。
※国内の日本人のみ
※循環器系の疾患は、心疾患、高血圧性疾患、脳血管疾患などをいう
※日本・イギリス・ドイツは2004年、カナダ・フランスは2003年、アメリカは2002年のもの
出典:総務省統計局「世界の統計2010」から作成
日本人を対象にした「多目的コホート研究」によると、緑色の野菜を「ほとんど食べない」人の胃がんの罹患リスクを1とした場合、「ほとんど毎日」食べる人の相対リスクは0.77になりました。
同じく、「ほとんど毎日」食べる人の相対リスクは黄色の野菜では0.66、緑黄色以外の野菜では0.59と、罹患リスクは低くなる傾向が見られました。
調整因子:性別、年齢、地域、教育歴、喫煙、BMI、飲酒、ビタミン補助剤の利用有無、エネルギー摂取、食塩分食品摂取、胃潰瘍の既往、胃がんの家族歴
※緑色の野菜はほうれん草など、黄色の野菜はにんじん・かぼちゃなど、緑黄色以外の野菜は、白菜・キャベツなど。
出典:「多目的コホート研究」ホームページ http://epi.ncc.go.jp/jphc
国立がん研究センター 医学博士
津金昌一郎 氏
がんは予防が可能です。近年、罹患する年齢まで遺伝子の配列で決まっているとみなす説もあるようですが、それは正しくありません。むしろ食生活など生活習慣の影響が大きく、その欧米化により、日本では胃がんが減少し前立腺がんや乳がんが増加しているとされています。
WCRF(世界がん研究基金)/AICR(米国がん研究財団)の報告書※1によると、口腔、食道、胃などの部位において、野菜・果物が“ほぼ確実”にがんを予防すると結論づけており、少なくとも1日400gの非デンプン性の野菜・果物をとることを推奨しています。
日本人を対象とした研究では、野菜・果物の摂取量が特に少ない人は、胃がんリスクが高いことが示されています※2。同報告では、特に加齢とともに罹患率が高くなる(悪性度の低い)胃がんにおいて、野菜全般の摂取量が減るほどリスクが増大するというデータもあります。がんと野菜の関係は研究途上にありますが、総合的な疾病予防の観点からも、野菜を多くとる食生活は推奨すべきといえるでしょう。
※1 WCRF/AICR The second Expert Report 2007
※2 野菜・果物摂取と胃がん罹患リスクとの関連を調べた「多目的コホート研究」より
WCRF(世界がん研究基金)とAICR(米国がん研究財団)による報告では、非デンプン性の野菜は口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、胃がんの発がんリスクの低下に“ほぼ確実”と報告されています。
同じく、ネギ属野菜は胃がん、にんにくは結腸・直腸がんの発がんリスクの低下に“ほぼ確実”と報告されています。
果物は、口腔・咽頭・喉頭がん、食道がん、肺がん、胃がんの発がんリスクの低下に“ほぼ確実”と報告されています。
赤身・加工肉は結腸・直腸がんの発がんリスクの増加に“確定的”と報告されています。
※膀胱がんについては、表記の食品等はリスクの増減がなかった
出典:WCRF/AICR The Expert Report 2007から作成
がんや心疾患による死亡への対策が課題だったアメリカでは、1970年代からがんと食生活との関連をめぐる研究が盛んでした。1980年後半には、禁煙やアルコール摂取量の制限のほか、野菜やフルーツの摂取促進が、がん予防に効果的であることが疫学調査等で判明しました。
そこで、1991年にアメリカのPBH(農産物健康増進基金)とNCI(米国国立がん研究所)が協力して、健康増進運動「ファイブ・ア・デイ(5 A DAY)運動」を開始。官民が一体となって「1日5サービング(皿)の野菜と果物を食べましょう」と展開しました。その後2003年にはがんの死亡率の罹患率の絶対数が減少するという成果があり、1,800以上の組織、35,000店以上のスーパーマーケットが参加するという国民的運動に発展しました。
参考:5 A DAYレポート http://www.5aday.net/report_old/html/r/r_017.html